ふるほん

私は大学時代、1年ほど古本屋でアルバイトをしていた。

その古本屋はマンガ、文庫、単行本など何でも扱う本屋だった。平日の昼は店長が店番をしているが、平日の夜と土日はアルバイトが店番をしていた。店長のほかにオーナーがいて、他にも古本屋を何店舗か経営していた。意外に思われるかもしれないが、古本屋というのはうまくやればけっこう儲かる商売で、オーナーはベンツを乗り回していたし、私のいる頃も税務署の調査が入るほどだった。

バイトの私も仕入れをしていた。店頭の他に他店と共通の倉庫があり、そこにない本は買い取り、ある本は買い取らないという方針だった。意外に思うかもしれないが、ベストセラーはすぐに倉庫に余るうえ、ブームはすぐ過ぎて売れなくなるので、ほとんど買い取ることはできなかった。よく売れるのは固定ファンがいる時代小説やエロマンガ、アイドルの写真集等だった。時効だと思うので明かすと、店頭には並べないが裏本も扱っていた。3月は買い取りのピークで倉庫に本が山積みになるが、秋にはほとんど買い取りが無く店頭でさえ棚がスカスカになってしまっていた。作家が死ぬとその人の本の売れ行きが急増するし、アニメの再放送で連想買いが入ることもあった(たしか「めぞん一刻」の再放送で高橋留美子の漫画が連想買いされるという事があった)。新刊のハードカバー単行本ばかりよく買い取りに持ち込んでくる人がいて、万引だと思うのだが、身分証明証もあるし確証もないので買い取るしかなかった。古紙回収業者の人たちもよく回収した古本を持ち込んでくれることがあった。ただ高値で買い取れと凄む人もいて、その人は出入り禁止になった。

店長はその後結婚して引退し、京都に住んでいる。今でも毎年年賀状をいただいている。

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